小室直樹『危機の構造ー日本社会崩壊のモデル』(ダイヤモンド社、1976)

日本の狭量なアカデミアが小室直樹の才能を受け入れなかったのは
学者小室にとっては不運なことだったかもしれない。
けれども小室ゼミ門下生、一般書読者にとっては
小室学の成果を分けてもらえたことが何とも幸運だったと思いたい。
小室直樹『危機の構造—日本社会崩壊のモデル』
ダイヤモンド社、1976)を読む。


f:id:yukionakayama:20190224183756j:plain:w500


『評伝・小室直樹(上・下)』を執筆した村上篤直が
ダイヤモンド社坪井論説委員のインタビューに答えていたとおり、
一般読者向けデビュー作のこの著書に小室学のエッセンスが詰まっていた。
(まだ小室全著作を渉猟した訳ではないが)
76年と言えば、日本の高度経済成長がまだまだ続いていた時代だ。
そのとき、繁栄の中に危機が内在し、
戦後の日本人意識が戦前に直結していることを例示し主張したのが本書だ。


僕はこの本が読みたくて公立図書館蔵書をずいぶん探したが、
S区に中公文庫版が一冊あるのみだった。
その一冊も借りている人が期日に返さず、待機の状態が続いていた。
やむを得ない、と送料込みで5,000円少々払って、
ようやく古書店で入手した。


その後、古書マーケットで
僕が買った半値以下で2冊出品されたが
24時間経たないうちにどちらも売れていた。
今も読みたがっている読者がいるのか、
こすっからい人が利益を乗せて転売しようと企んでいるのか(ありうる)。



中公文庫編集部のみなさん、
いまこそ橋爪大三郎解説付きの文庫を
復刊するタイミングではありませんか?
文庫で14,400円って古書マーケットの現状はあんまりですぜ。
(ビジネスチャンスがありますぜ)