小室直樹『数学を使わない数学の講義』(祥伝社、1981/ワック、2005/2018新版)

佐藤優さんが同志社講義「宗教改革とは何か?」、
メルマガ「佐藤優直伝・インテリジェンスの教室」で
村上篤直『評伝・小室直樹』(上下二巻)を紹介した。
その関連で目に留まったのがこの本。
パラパラ立ち読みするとなかなかいいことが書いてある。
小室直樹『数学を使わない数学の講義』(ワック、2005/2018改訂新版)。


数学を使わない数学の講義 (WAC BUNKO 272)

数学を使わない数学の講義 (WAC BUNKO 272)


僕が感心したのは例えばこんな箇所である。


   教科書には、解のある方程式だけが選ばれている
   (略)


   つまり、数学の問題にしても人間が発見してきたものであり、
   そのかぎりにおいて、実人生と基本的な相違はない。
   すなわち、”一寸先は闇”であり、
   解答が用意されていないのが普通なのである。


   だから、教科書に載っている方程式の問題などというのは、
   いわば口説けば必ずなびく商売女を並べた
   昔の遊郭(ゆうかく)のようなものである。
   彼女たちは、その道のプロなのだから、
   金さえ出せばOKにきまっている。


   しかし、プロが口説けたからといって、
   一般のお嬢さんまで楽々口説けると思ったら大間違いだ。
   まったく同様に、教科書にある解ける方程式にだけ慣れすぎたのでは、
   解けない方程式に出会ったとき、右往左往するばかりで、
   どう対処してよいのかわからなくなる。
                         (pp.47-48)


ハハハ。
例の出し方が愉快じゃないか。
パラパラ頁を繰ると、
いまだったら思わず自粛しそうな例えや文言が
あちらこちらに見える。
これは面白い。


2018年出版の新書だから古書店を探してもムダかなと思い、購入。
後でよく調べると、1981年に祥伝社ノン・ブックスから出版した
『超常識の方法—頭のゴミが取れる数学発想の使い方』を改題。
2005年にワックが復刊した本の新版だと分かった。
どうりで、書名と内容がややちぐはぐな印象だと思ったよ。
かなり売れてるらしいから、ワック、なかなか商売上手だな。



この本を読んで、なんだか小室直樹に親近感が涌いてきた。