洞察力を強化する読書筋トレ


月に一度、京橋の講義に通う。
同志社講座・佐藤優講師「キリスト教ナショナリズム2」、
第4回「エトニの存続と消滅について」。
この一年かけて、アントニー・スミスの
『ネイションとエスニシティ』を読んでいる。


ネイションとエスニシティ―歴史社会学的考察―

ネイションとエスニシティ―歴史社会学的考察―


およそ200年前に生まれ、
近代の産物と理解されているナショナリズム
原型となる「エトニ」が存在し、歴史のどんな時期にも
大陸のどの場所でも現れうる。
エトニはネーションをめざす場合もそうでない場合もある。


地球上で民族国家となれるネーションの数は、
民族国家になれなかったネーションの数より遙かに少ない。
民族国家になったネーションは
自分たち以外のエトニの力の発現を封じる。
必然的に衝突が生まれ、流血となる。
これがナショナリズムのダイナミズムだ。


一年前読み始めたときはまったく歯にたたず、
日本語として文章が目に入っても
筆者の言わんとする意味が分からなかった。
参加者が講師が指定する箇所を順番に読み上げ、
その後、講師の注釈を聴き、大事な箇所をノートに取る。
その作業を受講者同志で丁寧に続けているうちに、
飛行機が滑走路を飛び立ち、オートパイロット状態になって
地上の風景が一望できる感覚を味わった。


僕は本書本文を三度通読した。
三度目にシャープペンシルで線を引き、
サブノートを作成した(まだ完成していない)。
なるほどスミスの言っていることはこうなのか。
それに対して僕が同意したり反論したり、
対話が生まれるようになってきた。


佐藤講師は言う。
「音読が精確にできるようになったときには
本文の理解が進んでいる。
理解していないときは精確な音読ができない」
まさに、自分でも理解しづらい箇所を音読して予習復習していた。
「本書は大学教養課程レベルで学術書としては最高峰。
これがみなさん読めるようになったから、
他の学術書も読めます」



佐藤講座に月一回通い、
メルマガ「佐藤優直伝・インテリジェンスの教室」を読み続け、
ときに質問を提出し解答をもらって2年。
読書によって自分の知見を広げ深め、
洞察力に結びつけられることを実感できて本当にうれしい。
60代に入ってもそうした力を強化できることを証明できるのは
人生の痛快事だ。



人間への途上にある福音

人間への途上にある福音


5月からは佐藤講師の「神学的思考とは何か?」が開講。
同志社東京オフィスで同講師初の通年講座だ。
年10回(各回90分)、年間30,000円。
本格的な講座にしては割安で同志社、佐藤講師の良心を感じる。
いち早く申込み、教科書に指定された図書2冊も古書店で購入し
予習を始めている。
佐藤講師生涯のテーマであるフロマートカの信仰、哲学に
僕たちもいよいよ取り組む。
この2年の蓄積で準備は整ったと思う。


生活をできる限り簡素にし、創意工夫して節約する代わり、
自分が「ここぞ」というインプットにだけはお金を使う戦略に
定年後切り替えた(まぁ、それくらいの年俸だということだ)。
80歳まで現役で働くためのインプットだ。



大学生の一日の読書時間は平均24.4分。
49.1%が0分。
スマートフォンの一日平均利用時間は、161.5分。
朝日新聞2017年2月24日朝刊より引用)