佐藤優『それからの帝国』(光文社、2023)

優さんのモスクワ国立大学以来の親友サーシャとの
その後が気になっていた。
佐藤優『それからの帝国』(光文社、2023)を読む。


(カバー写真:奈良原一高<静止した時間>より/カバーデザイン:秦浩司)


「まえがき」から引用する。


  この本は、私の人生の中間報告である。
  私はこれまで自伝的ノンフィクション(当事者手記)として、
  『国家の罠ーー外務省のラスプーチンと呼ばれて』
  『自壊する帝国』(いずれも新潮文庫)、
  『先生と私』『十五の夏』(いずれも幻冬舎文庫
  などの作品を刊行した。


  時系列的には出生時から幼稚園、小学校、中学校、高校、
  大学・大学院、外務省時代の生活が書かれている
  (ただし大学浪人の1年間についてはほとんど書いていない。
  あの時期の自分の思考の変化について
  まだよく整理できていないからだ)。


  時間的には、鈴木宗男事件に連座して
  2002年5月14日に東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され
  512日間の勾留生活を送り、
  その後2005年2月17日に東京地方裁判所
  懲役2年6ヵ月(執行猶予4年)の判決を
  言い渡されたところで止まっている。
  鈴木宗男事件で私の心の中の時計が止まってしまったのだ。
  (略)


  …心情としては国内亡命者だった。
  この私の心理が決定的に変化したのは、
  モスクワ国立大学哲学部科学的無神論学科
  (現在の宗教史・宗教哲学科)で机を並べて勉強した
  アレクサンドル・ユリエビッチ・カザコフ君(愛称、サーシャ)と
  2012年5月に再会したことによってだ。
  サーシャは私より5歳年下だが、早熟の天才だ。
  (略)


  私はサーシャとの再会で、
  もう一度、社会に積極的に関与する決意を固めた。
  それは同志社大学神学部で次世代を担う若者に神学を教えることだ。
  2015年4月から2023年3月まで私は神学部の客員教授をつとめた。


  当初、2年程度、教壇に立つつもりだったが、
  私がプロテスタント神学研究の手解きをした神学部の1回生全員が
  大学院を出て就職するまで伴走することになったので7年かかった
  (2022年1月から慢性腎臓病が悪化し、血液透析の導入になり、
  その後、前立腺がん、心臓冠動脈狭窄の手術をなどをし、
  闘病が重要な課題になったので、
  大学の仕事は一部を除き休止した状態になっている)。


  今回、私の人生が
  大きく転換するきっかけをつくったのもサーシャだった。

                          (pp.2-5)