1300年を生き抜いてきた阿修羅




半日休暇を取って
上野に「国宝・阿修羅展」を観に行った。
きょうで開催三日目。
行列覚悟で行ったが、
昼時だったためか30分待ちですんなり入れた。
待ち時間はiPod志ん生を聴いていたから
少しも退屈しなかった。



  (上野の桜は八分咲き。花見客でにぎわう)


大学時代に奈良に行った折りだったか、
もしかしたら以前に観たことがあるかもしれないが
とんと記憶にない。



阿修羅のたたずまいはなんとも美しかった。
目が釘付けになるとはこのことか。
学生時代と違って僕もそれなりに社会で鍛えられてきたから
受け取るものが昔とは変化したのかもしれない。



約60年ぶりに東京にやってきた阿修羅は
360°ぐるりと鑑賞することができる。
ガラスケースにも入れずに
そのままの姿を観ることができるのだ。
日本人の芸術鑑賞も成熟したものだと思う。
事故でもあれば取り返しがつかないが、
熱心に鑑賞する人々の姿には
そんなリスクは微塵も感じなかった。



  (多聞天立像 [四天王のうち] 康慶作 1189)


現代の人間どもが百年に一度の金融危機と騒ぎ立てるとき、
1300年の時間と対峙してきた美術品の一群を眺めていると
なんだか気持ちが落ち着いてくるようだ。
日本の誇りが凝縮したカタチになっていて
自分たちのアイデンティティを観ている感覚にとらわれる。
阿修羅たち八部衆興福寺が八度火災で消失したときも
生き抜いてきたのだ。持っている運の強さが違う。



  (鳩槃茶立像 [八部衆のうち] 734)


日本人の阿修羅好きも相当なもので
海洋堂が製作したフィギュア
最初の入荷分が初日にあっという間に売り切れになったと
ホームページに出ていた。
そう聞くと、僕も俄然欲しくなっちゃったな。



(翌日、アシスタントのYさんにお願いして
 鑑賞がてら予約注文してきてもらった。
 会場に行かないと予約できないのだ。
 15,000個限定。2,980円。お一人さま一個限り。
 4月6日の最新情報によれば
 4月中旬で予約受付終了の見込み)



働き盛りの男たちも
ときには日経新聞を閉じ、
昼休みの時間にあと一時間を加えて
こうした空間にやってくるとよい。
会社に借りた一時間は、
早朝出勤、自主残業で補って返しておけばすむことだ。



  (迦楼羅立像 [八部衆のうち] 734)


日常と異なる時間を、
自分と同じ市井の人たちと現地で過ごすことは
普段の仕事にも別の視点、発想をもたらしてくれるだろう。
僕はそう思う。


上野・国立博物館平成館で6月7日まで。入場料1,500円。



(本文の写真は『国宝・阿修羅展公式図録』(朝日新聞社発行)より
 引用させていただきました。
 美術出版社の写真撮影、デザイン、
 凸版印刷の印刷技術が素晴らしい。
 定価2,500円の倍の価値はあると思います。
 会場に行けない方は 下記リンクから通信販売でも購入できます)


 http://shop.asahi.com/shop/goods_group?goods_group_id=438&${session}


Takさんのブログ「弐代目・青い日記帳」で
詳細な報告を見つけたのでリンクしておきます。
どうしても行けない地方在住や海外在住の方、
行く前の予習、行った後の復習などに活用してください。
(Takさん、リンクの許諾、ありがとうございます)