『日本の自画像/写真が描く戦後 1945-1964』


ゴールデンウィークの有難いのは
普段と違う時間の使い方ができることだと僕は思っている。


(なぜか最近は大型連休と言うことが多いようですが、
 週をまたがっているからでしょうか。
 勤め人にとってはゴールデンウィークと呼ぶ方が
 断然うれしいですね)



  (ポスターの作品は、濱谷浩「田植え女」1955
   僕は最初、地上戦を戦っている兵士だと思いました)


通勤途上の駅貼りポスターで気になっていた写真展
「日本の自画像 写真が描く戦後1945-1964」に行ってきた。
我が家から自転車で行くのにちょうどいい距離なので
サイクリングも兼ねてみる。



そもそもはパリ在住のキュレイター、
マーク・フューステル(Marc Feustel)
その母、ヘレン・フューステルの企画である。
岩波書店・多田亞生、世田谷美術館館長・酒井忠康らの尽力により
今回の写真展が実現した。



マークは日本の写真史をリードしてきた11人の写真家を選び、
敗戦から東京オリンピックまでの時期を区切り
作品を編集していった。
それまでほとんどヨーロッパで知られていなかった
日本の写真の黄金時代を広く知らせたいと言う
マーク、ヘレンの情熱が動機となった。



  1. 敗戦の余波
  2. 伝統と近代のはざまで
  3. 新しい日本へ


時代別に三部構成とした168点すべての作品を
僕は食い入るように鑑賞した。
確かにそこには時間が刻まれ、街の風景が刻まれ、
人々の表情が刻まれていた。


「日本の自画像」は、決してただ陰鬱なだけでなく、
けれども陽気なだけでは無論なかった。
こうした時間の延長にいまの自分がいて、
自分たちの暮らしがあることが
なぜかとても不思議な、現実感がないことのように思えた。



時間は連続しているはずなのに、意識は途切れていた。
そのポッカリ空いていた意識の穴から、
168点の作品が2009年5月に生きている僕に
なにかを懸命に伝えようとしていた。
おそらくかなりの割合で死者である人たちの過去からの伝言を
僕がきちんと受けきれたのかどうか。
僕は過ぎ去り、忘却された時間となんとか対話しようと
何度も試みた。



マークとヘレンが選んだ11人の写真家は以下の通りである。


  石元泰博、川田喜久治、木村伊兵衛田沼武能、東末照明、
  土門 拳、長野重一奈良原一高、濱谷 浩、林 忠彦、
  細江英公



日本を愛し、かつ日本に手厳しい海外の友人が必要だと僕は思っている。
サイデンステッカー、ライシャワーらはその代表である。
この写真展も、マーク、ヘレンの二人が
日本の外から光を当てたことで発掘され、編集されて実現した仕事である。
こうした友人を持つことは人生最大の幸福のひとつではないか。



6月21日まで世田谷美術館で開催。
10:00-18:00。月曜休館(5月4日は開館)。
入館料1,000円(大人)。
世田谷美術館ホームページから
割引券をプリントアウトしていくと100円引きになる。


Japan: A Self-Portrait: Photographs 1945 - 1964

Japan: A Self-Portrait: Photographs 1945 - 1964


日本の「自画像」1945~1964

日本の「自画像」1945~1964


(文中敬称略)