ケの銭湯、ハレの獺祭(だっさい)

土曜日。美術館への遠足帰り。
おとなはまっすぐ家に帰らず寄り道するのである。



東京銭湯お遍路第30湯・世田谷5番「松原湯」。
京王線明大前駅から5分ほど歩いた住宅街にある。
おそらくは街の人々に愛されている、まさに日常使い、
ハレでなくケそのものの銭湯である。


松原湯、なんの変哲もないようでいて、
銭湯絵師・中島盛夫さんが毎年背景画の富士山を描きかえている。
人が見過ごしがちなところにお金をかけている。粋だね。



湯上がり、30秒も歩かないうちに
山口の銘酒「獺祭(だっさい)」を置く居酒屋に出会う。
この酒は「銘酒、店を選ぶ」のであって、
「獺祭」を飲ませる店で、ぞんざいな扱いを受けたり、
料理が手抜きだったところはいままで一軒もない。
暖簾をくぐる。



谷中しょうがやら、
親父自慢のかにしんじょう揚げ(一口コロッケ風)を肴に
「獺祭」の純米大吟醸、発泡にごり酒をひとり静かに飲む。
近所の常連らしき客たちが、親父と愉しそうに会話している。
ほろ酔いのうちに勘定を済ませ、僕はそっと引き上げる。