「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」展

どの美術展に行くか決めるとき
僕が大いに参考にしているブログに
Takさんの「弐代目・青い日記帳」がある。
なんせ、Takさんは年間300本の展覧会に出かけ、
その詳細なレポートをブログに書き続けてくれるので
東京および近郊における美術展の様子が日々アップデートしてもらえる。
ブログコミュニケーションによる恩恵のひとつである。



そのTakさんが2009年前半ナンバーワンと推薦するのが
川村記念美術館で開催中の「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」展。
東京駅から総武線・快速成田エアポート、
佐倉駅から無料の送迎バスを乗り継いで90分、
これはちょっとした旅であるね。


土曜日、「自家製美術館弁当」をつくり、
新茶を詰めたポット、携帯はしと一緒に
バックパックに入れて、いざ、出発。
快速電車の中でいただくことにしましょう。



川村記念美術館は色見本で有名なDICが所有している。
美術館の周辺は気持ちのいい散策路になっていて、
散歩するだけなら無料で入れてもらえる。


マーク・ロスコ。ロンドンのテートモダンに行ったときに
この造形、色には見覚えがあるが、
作家についても作品についても詳しいことは知らなかった。



キャンバスにほとんど真っ黒に塗られた連作が
一部屋に展示されている。
アーティストが行き着く極限なのかも分からないが、
僕はどう受け止めていいか正直とまどう。
少なくとも分かったふりだけはしたくない。


メイン会場であるロスコルーム。
濃いオレンジ色と焦げ茶色を基調とした連作が飾ってある。
僕は頭で理解することを中止し、
他のみなさんと同じように中央に用意されたソファに腰掛け、
20分か30分、沈黙して過ごしてみる。



これらの絵画が当初飾られるはずだったように、
もし、ここがニューヨークかどこかのレストランだとしたら、
あるいは、ここが自分が日々仕事をするオフィスだとしたら。
想像しながら、妄想しながら、
ロスコの作品群の中でしばらく空白になってみる。


いま、読んでいる村上春樹の作品「1Q84」は、
ロスコルームの空間になんだか似合うなぁ。
そんな思いが通り過ぎてゆく。
絵画を眺めていて人が瞑想するのか、
絵画そのものがこの空間で瞑想しているのか。



美術館を出て、
帰りのバスが来るまでの間、散策路を歩いてみた。
思ったほどの広さではなかったが、丁寧に手入れされている。
もし僕がこの近所に住んでいるなら、
天気のいい日に自転車でやってきて
ベンチで本でも読んでみたいと思える空間だった。



作品を観た後でロスコの年譜やら、
テートミュージアム館長とやりとりした自筆の手紙などを読んでみると、
激しい人生を生きたアーティストであることが理解できた。


自分の作品だけが飾られるルームをテートミュージアムに持つのが
ロスコの生涯の夢であった。
その夢が実現したとき、
ロスコ自身はそのルームを一度も訪れることなく
暮らしていたニューヨークで自殺する。



今度の展示はロスコの作品群を所有する
テートモダン、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、
川村記念美術館のコラボレーションで実現した。
マーク・ロスコの生涯賭けた夢を
僕もほんのひととき、共有させてもらったのだった。


マーク・ロスコ 瞑想する絵画」展は
6月7日で終了予定だったが、
好評のため、6月11日まで会期が延長になっている。
館内はもちろん撮影禁止だが、
Takさんが主催者の許可を得て撮影した写真が、
「弐代目・青い日記帳」に掲載されている。


wikipedia:en:Mark Rothko
wikipedia:マーク・ロスコ