「直感のブランディング」(2009)


ディヴィッド・ヴィンジャムリ「直感のブランディング」読む。
ブランディングの本と聞くと「またか」と思うかもしれないが、
予想していたよりずっと内容がよかった。
事実にもとづく7つの物語で構成されていて
普通の人たちが立ち上げたブランドについて
著者が詳細に取材・分析をしている。


直感のブランディング ― 「普通」の人が「特別」を生みだした7つの物語(ストーリー)

直感のブランディング ― 「普通」の人が「特別」を生みだした7つの物語(ストーリー)


例えば、全米の人気サイトベスト10にランクされる
Craiglistを立ち上げ、現在も運営している
クレイグ・ニューマークが登場する。
Craiglistはもともと住まいや仕事を探すために
アクセスする人たちが自由に使える電子掲示板といったものだ。
そこから人と人の出会いや再会をとりもつサイトにまで
発展しているのだが、みごとなほど商売気が薄い。


不動産や求人について案内を出すには
多少の広告費が必要だが、後はすべて無料。
その代わり、主宰者も参加者同士のコミュニケーションには
基本的に立ち入らない。



試しに、CraiglistのTokyo版を覗いてみたのだがこれが面白い。
リアルな世界が垣間見えるのだが、
文字中心で品位が保たれていて、
まさに「組織された混沌」
サンフランシスコのデザイン会社IDEOのスローガン)がそこに現れる。


クレイグ・ニューマンは本書によれば物静かな男で、
しかも金銭欲、名誉欲といったものからも一定の距離を置いている。
まさに現代のネット世界をリードしている人たちに共通する
仕事観を持つように僕には見受けられる。



本書で取り上げた7人の現在を追いかけるには
それぞれのサイトに飛び込べばよい。
中には既に自分のブランドを売却して別の人生を送っている人もいる。


ブランドの後ろに人間たちがいることを
再証明したことが本書の収穫だ。
それも大成功したブランドではなく、
中成功くらいのブランドを取り上げた視点が新しい。


(原題は、"Accidental Branding:
 How Ordinary People Build Extraordinary Brands"。
 直訳すれば「偶然を活用するブランディング」といったところか)


  wikipedia:en:Craig Newmark