2009年度後期NHK語学講座レビュー


「英語を話せるようになりたい」
と僕のところに相談にやってくる人には
NHKラジオ英語講座のうちから
 自分のレベルに合ったものを見つけて始めてみてはどうでしょう」
と助言する。


しかし、たいがいの人は怪訝な顔をしているから、
きっとまた他の方法を探し続けるつもりに違いない。
語学学習の第一のコツは、
とにかくどんな方法でもいいから始めてみることなのだ。
第二のコツは、毎日短時間でもいいから続けることである。



NHK語学講座はこれまでリスナーから定評があった先生、
そのとき旬な先生たちが力を入れて教材をつくり講義する。
語学講座としてステータスがあるのも事実だし、
多くの講座はその後、CDブックスの形で再度世に問うことになる。
下手なものは作れないとどの先生も創意工夫の限りを尽くすのは
自然のなりゆきである。



毎月(講座によっては隔月など)のテキストが380円プラスα。
CDを同時に購入するならプラス1,500円前後。
たいがいの英語学校より、英語学習書より割安である。


もっとお金を払えば、あるいは個人教授ならば、
英語がスラスラ身につくに違いないと考えるのは自由だし、
人によってアプローチが異なることは認める。
僕はそうして英語や他の外国語を身につけてきたと
話しているだけのことなのだ。



2009年度後期の講義が終わった。
簡単にレビューしておく。



杉田敏/松下クリス/岩本スーザン「実践ビジネス英語」(通年)


NHK英語全14講座の最高峰。
ビニエットに取り上げる話題が豊富で最新である。
後期だけでも、"Crime Spikes" "Journalism as a Career"
"Marriage for Fortysomethings"
"Opting for a Simple Lifestyle" 
などアメリカ社会の最前線のテーマが並んでいて耳が離せない。


杉田先生にはこの先一年でも長く
講義を続けていただきたいと僕は望んでいる。



エド・スミス/デイヴィッド・ネヴィン/金井真努香/藤本ケイ
「入門ビジネス英語」(通年)


やや定型どおりのストーリー展開が物足りなかったが、
後期になって主人公が困難にさらされるようになり、面白くなった。
入門英語の範囲でリスナーを引き込むストーリーづくりをするのは
講師の先生方にとっても簡単ではないだろう。
この講座は来年度、再放送する。



大杉正明/リサ・ヴォート「英語ものしり倶楽部」(通年)


英語俳句あり、インタビューあり、文法講座あり、
ミュージック・コーナーありと
日曜日の再放送でのんびり聴くには最適の講座。
大杉先生、リサさんのやりとりがなんとも楽しく、
一直線に英語を学ぶのでなく、
道草しながらいつの間にか語彙やら文化的背景やらが
身につくのがとてもよい。


この講座も来年度、再放送。
本当は新作を聴きたいのだが、NHK語学講座も予算削減なのか、
再放送、再々放送の講座がじょじょに増えているようで気になる。



保阪良子/ダニエル・ケルン/ブリッタ・シェレンス
「『カナ』手本ドイツ語」(半年/再放送)


この講座を聴くのは二回目。
ドイツ語学習を再開して5年。復習を兼ねて聴くにはちょうどいい。
12歳のときに学び始めた英語とは上達のスピードが違う。
二歩前進、一歩後退の繰り返しのような段階だ。
主人公の女性カナが現代的で型にはまっていないのが楽しい。
スクリプトを書いている保阪先生の分身なのかもしれない。



太田達也/マルコ・ラインドル/大澤詩織
「フェリックスの日記帳〜これでナットク! ドイツ語文法〜」
(半年/再放送)


太田先生、ラインドル先生が共同執筆するドイツ語物語は
ストーリー展開が秀逸である。
以前の講座「ゲンのバイオリン」も楽しめた。


この講座は日記文、手紙文、新聞記事などの形式を
多彩に使って進めていく。
「『カナ』手本ドイツ語」よりレベルが高いので
そうそう一気にはマスターできないのだが、これで二回目の挑戦。
少しずつ理解し納得できる領域が増えてゆくのが
語学学習の愉しいところ。


(文中一部敬称略)