佐藤尚之『明日の広告』(2008)

佐藤尚之『明日の広告 変化した消費者と
コミュニケーションする方法』を読む。
2008年1月に出版されたロングセラーである。
発表されて2年以上が過ぎたが、僕にはいまが読み頃であった。



佐藤らが手がけた「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」は
そういうことだったのかと、
キャンペーンのラストシーンを読んでいてジーンとした。
僕自身はこの広告の対象ではなかったから、
おそらくこのコミュニケーションの価値が
以前はよく分からなかったのだ。



佐藤は変わってしまった消費者と対話するために、
広告を職業とする者や業界が変わらないといけないと
一貫して主張する。
しかし、危機をあおるだけでなく、
消費者のためのソリューションが求められる今こそ
エキサイティングな時代なのだと僕たちにメッセージを送る。
そのためのコミュニケーション・デザインなのだ。



『明日の広告』には
人を脅迫するだけの否定的コミュニケーションでなく、
不完全ながらも自ら出口を示した
肯定的コミュニケーションの実例がある。
出口を示し、みずからがリーダーとなって
現場で汗をかいていることが、
業界を越えてこの本が支持され続けている
最大の理由であると僕は思う。



この本を契機に筆者が1995年に開始したサイト、さとなお.com
ひんぱんに訪ねるようになった。
ここには紛れもない「おもてなしの精神」があり、
訪れるゲストとほどよい距離を保つ店主、さとなお氏がいる。


(文中敬称略)