ジョン・ダワー『増補版 敗北を抱きしめて』(上)(2004)


ジョン・ダワー『増補版 敗北を抱きしめて』(上巻)
三浦陽一・高杉忠明訳)(2004)を読む。
1999年に原著が発行され、2001年に邦訳版を出版。
筆者が収集した写真資料を豊富に取り入れた増補版が本書である。


敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人


歴史を学んでいるといつも思うことがある。
僕たちが生きている現在は過去とつながっているという事実だ。
当たり前ではないかと思われるかもしれないが、どうだろう。
普段は目の前にあること、いまの暮らしがあることを
当たり前のように受けとめている。
しかし、過去のある時点まで時間を遡ってみると、
まるで異なる未来に進む可能性があった分岐点に行き当たる。



1945年8月の敗戦はそんな分岐点のひとつである。
連合国、とりわけアメリカの日本占領に関する戦略、戦術。
マッカーサー連合軍最高司令官の野心、思惑。
天皇制の存続と上からの民主主義。
憲法。女性参政権に代表される男女平等。


普段はそうした歴史的事実が
現在の自分の暮らしに直結している実感はない。
しかし、気づかぬからと言って、
あるいは目をつぶっているからと言って、
現在につながる歴史をなかったことにはできない。



時間と人間と社会が織りなす歴史の重みをひとたび実感してしまうと、
いまの暮らしが当たり前には思えなくなる。
そして、現在の政治や経済の混乱ぶりにも
原因と結果があることを知る。
同時に政治や経済はいまに始まったことでなく
常に混乱してきたことを歴史が教えてくれる。
その事実を受けとめるのは、重たいことであるなぁ。


2000年度ピュリッツァー賞(一般ノンフィクション部門)受賞作。
本の目利き151人が選んだ「ゼロ年代(2000-2009)の50冊」
朝日新聞社企画)にも上位にリストアップされた。


wikipedia:en:Pulitzer Prize