湯谷(ゆだに)温泉はコニャックの如く


富山遠征二日目は遠足である。
バス、JR、JRと乗り継ぎ県西部の町、砺波(となみ)まで約2時間。
砺波は大門(おおかど)そうめんで名高い。
ここからさらにクルマで20分から25分、
山奥に入ってゆくのである。



腹ごしらえで入った寿司屋
(その日、砺波で唯一で営業していた食べ物屋!)で寿司をつまむうち、
親父が「オレも一緒に行ってもいいかな?」と言い出す。
秘湯会がめざす湯谷(ゆだに)温泉は、
この町で生まれ育った親父が幼い頃、鮎を取っていた場所なのだ。
東京からやってきた二人組から「湯谷温泉」の名前が飛び出し、
すっかり温泉ごころが刺激されたものとみえる。



かくして、親父の軽自動車で男三人、庄川に向かう。
小牧ダム直下に湧く湯、それが湯谷温泉
温泉好きブロガーたちの間では北陸一の湯と名高い。


もともとは湯治場だったが、
現在は山の湯に取り憑かれた物好きだけを素泊まりで泊める。
予約しようと東京から電話をかけ、
「僕たちは、その物好きなんです!」とおかみに乞い願うも、
「まぁ、一度昼間入って気に入ったら次回泊まってよ」
と軽くいなされてしまった。そういう宿である。




さて。
あふれんばかりの掛け流し。なんたる豊富な源泉。
洗い場まで湯びたしになるという噂はまさしく真実であった。
湯質はまるで上質のコニャックの如く、
身体になんら抵抗がないくらい柔らかい。
それなのに入りすぎると効き過ぎるくらいの温泉力なのである。
ああ、ここに泊まって何度もこの湯を味わいたかった。



湯守りをしてくださっているおかみに感謝し、
いつか再訪したいものだと湯谷温泉を後にした。