湊かなえ『告白』(2008)

湊かなえ『告白』を読む (2008単行本/2010文庫本)。
おととい、映画版『告白』を観たばかりだから、
頭の中には映像と音の印象が残っている。
主人公の森口悠子先生は松たか子以外の顔は浮かんでこない。


告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)


原作を読んでみて
第一章「聖職者」から第六章「伝道者」まで
緻密に構成されている物語であることがよく分かった。
どこかに隙があれば荒唐無稽な話に思えてしまうのに、
最後までリアリティをもって伝わってくるのは、構成の緻密さだ。



映画がそのリアリティを失わなかったばかりか、
13歳の少年少女の心や行動を映像に定着していたことに気づいた。
中島哲也監督は37人の中学生と原作や脚本について話し合い、
彼らの感覚や反応を取り入れていった。その試みが成功している。


森口悠子は松たか子とオーバーラップすることで凄味を増した。
監督の直観のキャスティングが成功した。
松にとっても『告白』の主役をやり遂げたことは
女優として新境地を開くきっかけになる気がする。



さて、湊はこの密度の物語を書き続けられるのか。
『告白』一作のみが傑作として読者の記憶に残るのか。
その点についてはまだ分からない。
今後の仕事が楽しみな作家になった。


'09年第6回本屋大賞受賞。
週刊文春'08年ミステリーベスト10」第1位。
この作品を選んだみなさんの眼は確かですね。
文庫巻末に中島哲也監督インタビュー収録。


(文中敬称略)