半世紀後に帰る鮭の記憶


僕が50年前に入学した小学校は港区立西桜小学校である。
都会のドーナッツ現象が既に進んでおり、
全校生徒合わせても数十人しかいなかったように記憶する。
あまりの新入生の少なさに(僕の同期は7人だったかな)
当時の新聞に写真入りで取り上げられたほどだったのだ。



その後、西桜小学校は南桜小学校と統合し桜小学校となる。
桜小学校が廃校となり、周辺3校が統合して御成門小学校となった。
桜小学校の校舎跡地にいま南桜公園ができていて、
近辺の会社員やホームレスたちの憩いの場になっている。



およそ半世紀が過ぎ、
いま務めている会社がこの地に移ってきて、
僕もグルリと一周して帰ってきた。
鮭が己の生まれた川に帰るが如く、半世紀ぶりに帰ってきた。



その頃の地図はなく、記憶はだいぶん薄れているので、
どんな風景の中で、どんな暮らしをしていたのかはボンヤリしている。
それでも、この土地に不思議な愛着がどこかあるのは、
鮭の記憶とでも言うものだろうか。