安政3年創業の酒屋「鍵屋」で飲む


冷え込んだ一日。
仕事を終えて、鶯谷まで足を伸ばす。
まずは根岸三丁目の台東6番・宝泉湯につかる。
湯質が柔らかく、合間に入る水風呂も肌に優しい。
湯上がり、宝泉湯から歩いて数分の場所をめざす。
鍵屋である。



僕には浜田信郎さん、太田和彦さん、吉田類さんといった
居酒屋に関する先達がいる。
個人として面識はないが
その著書、ブログなどを大いに参考にする。


ひとり呑み-大衆酒場の楽しみ

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酒場百選 (ちくま文庫)

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自選 ニッポン居酒屋放浪記 (新潮文庫)

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先達がこよなく愛するのが、
安政3年(1856年)に酒屋として創業、
昭和24年(1949年)から居酒屋として営業を始めた「鍵屋」である。
ガイドブックやネット情報だけに頼るのは面白くないが、
こうした名店は先達に導かれなければ偶然にはやってこられない。



この夜、楓のカウンターには先客ひとりのみ。
高松から出張で東京に来ていて、
晩ご飯を一緒に食べるはずだった友人の都合がつかなくなって
ここに初めて来て飲んでいると言っていた。


煮豆の付き出し。
煮奴、うなぎくりから焼き(一本は肝焼き)。
秋冬だけのメニュー、煮こごりを頼んで燗をつけてもらう。
辛口は菊正宗、大関。甘口は桜正宗
夜がとっぷり更けてゆく。
そこはかとなく池波正太郎の世界……


(文中一部敬称略)