西山太吉『沖縄密約ー「情報犯罪」と日米同盟』を読む。
読んでいくうちに1972年の西山事件と2010年の一色事件の
共通性に気づく。いずれも国家公務員法違反容疑に問われた。
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僕はふと疑問に思う。
僕たちは主権者として選挙のたびに投票を通じて
政党、政治家に権限を託す。
しかし、選挙と選挙の間に託した権力がどう運営されているか、
国民が監視する仕組みは充分なのだろうか。
沖縄返還にあたって日本がアメリカと密約と結び、
税金の使い方を隠蔽し、責任者たちが国会でも偽証する。
対中関係で領土が侵犯されている現実を示した映像資料を
突然「国家機密」として一部国会議員以外には公開しない。
国の未来を憂い、それらの情報を自己責任で公開した人間に
社会的制裁を与える。
一方でそもそもの国家運営について
どこまでの情報を国民に公開するかについては議論を深めず
仕組みも整備しない。
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その役割を期待されるメディアの機能も決して充分とは言えない。
記者クラブでの限定された情報を
限られたメディアが使用していることは再三再四指摘されている。
民主党に政権交代しても期待したほどの変化は見られない。
西山事件では情報を提供した外務事務官と記者の男女関係、
一色事件ではインターネット時代の情報漏洩問題と犯人捜し。
いずれも、短期間に情報をより多く売るために
よりセンセーショナルに、より扇情的に物語を加工し、
人々を一方向へと誘導する。
人々が過剰な情報を消費し疲れ飽きるうちに、
事件の本質はぼやけ、次の事件に焦点がずらされ、
すべてが忘却の彼方に追いやられる。
逆に国家を揺さぶるメディアとしてWikiLeaksが現れた。
WikiLeaksが出現する背景には
国家、メディア、個人のパワーバランスの再修正を
テクノロジーの進化によって果たそうとする意志があるように
僕には思える。個人でなく集合的無意識の意志である。
道徳倫理の善悪ではなく、パワーバランスである。
- 作者: リチャード・L・アーミテージ,ジョセフ・S・ナイJr,春原剛
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日米関係について別の視点からも見てみよう。
リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ Jr、春原剛
『日米同盟 vs 中国・北朝鮮 アーミテージ・ナイ緊急提言』(2010)
を読む。
そもそも日米同盟なしに、日本の安全は保障されるのか。
中国、北朝鮮、ロシアの動きを見てみろ、とアーミテージ、ナイは言う。
二人はアメリカ政界では、日本シンパと呼んでもいいだろう。
中国より日本との関係をアメリカが重視する必要があると主張している。
その二人が、安全は政治的そして軍事的責任を
果たすことなしには得られない、現実を見よ、と日本人に警告する。
- 作者: 山本七平
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「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思いこんでいる」。
イザヤ・ベンダサン(山本七平)の至言が頭に浮かぶ。
国家、メディア、個人。安全と平和の代償。
簡単には結論が引き出せない問題であることを真摯に受け止め、
自分の頭で考え抜くことを続けてみたい。
問題から目をそむけることで
平和も安全も手に入らないことだけは確実なのだ。
(文中敬称略)