マリエン大聖堂での音響実験


リンツ最大のマリエン大聖堂で
Sam AuingerとBruce Odlandが手がけた音響インスタレーション
「100,000平方m Bewegte Luft」。
20時54分から実験が始まる。
礼拝堂のあちこちで鈴虫が鳴くような音が聞こえる。
堂内では電子機器の使用はもちろん私語も禁止である。



200人以上はいるだろう参加者が一言も発さず、
静かに響く音に聴き入る姿はそれ自体荘厳な雰囲気を醸し出す。
やがて人がひそひそ話す音が混じり出し、
風のように空気が揺らぐ音がする。
なんだか不安な心理に陥るようで帰り始める人たちもいる。
僕もその場にいることが落ち着かない気分になった。



このインスタレーション
教会オルガニストを交えたパフォーマンスをはさみ明け方まで続く。
地元のラジオ局Ö1が3時間のライブ中継をしている。
Arsの底力はこうしたイベントひとつにも表れる。
フェスティバルの中に大聖堂を使用した音響実験が組まれ、
年配の人たちも大勢参加する。



文化の厚み、文化を理解する行政や宗教法人の力。
果敢に革新に挑むアカデミズム。
そうしたものすべてがなければ成立しない。
Arsはリンツの街おこしに始まって既に30年以上の伝統を持つのだ。