闘いすんで、陽が暮れて


黒兵衛が失踪から生還したのも束の間、
この日はハエタロウがお向かいのYさんの庭で
侵入してきたキジトラと一戦を交えた。
その雌叫びに我が家だけでなく
斜め向かいのMさん一家まで様子を見にきたほどである。



よそで虐待されて逃げ出し、
我が家周辺を住み処にするようになったハエタロウにとって
ウチは最後の砦。
この場所を譲ってしまっては生きていくことができない。
だから、雌ではあるがときに激しく闘う。



その夜、珍しく同居人の布団で寝ていたと思ったら
お腹のところに3センチくらいの傷を作っていた。
負傷して弱気になって同居人のところに来たのではないか。
すかさず傷に気づいた同居人は
かかりつけのDB先生の元に翌日ハエタロウを連れていき
抗生物質の注射で応急手当してもらった。
おかげで同居人の三連休はまたしても三連休に少しもならず、
翌朝から出張に出かける僕の肩身はますます狭くなるのだった。