瀋陽初日に携帯をなくす


青森よりやや北、台北よりやや東に
その都市は位置する。
人口760万人、1月の平均最低気温-16℃。
中国東北地方最大の都市、瀋陽に初めて来ている。
後金の時代にヌルハチがこの地を首都に定め、
満州事変で関東軍が占領していた時代は奉天と呼ばれていた。



今年は瀋陽で第18回中国国際広告祭が開かれる。
僕が8月に北京で審査した長城賞授賞式は
全四日間のプログラムの目玉のひとつだ。
中国広告協会主催の歓迎レセプションまでホテル近辺を少々散策。
うっかり迷子になりかけあやうく集合時間に遅れそうになったが
英語の話せる大学生に道を尋ね地図を描いてもらい事なきを得た。



食事の後は同僚たちと足つぼマッサージの店に向かう。
一日のしめくくりだ。
数種類の粉末を備え付けの小型シンクに入れ熱湯を注ぐ。
ピンク色の大根おろしのようなジェル状の物体ができあがる。
そこに足をつけることから一連のコースを始めるのがその店のやり方。
このところたまっていた疲れもほどよくとれ、
瀋陽の旅のスタートがうまく切れるはずだった。
ホテルに戻って一階のラウンジで珈琲を注文し、
会社の携帯が見あたらないことに気づくまでは。



中国生まれ中国語ネイティブの日本人同僚Eさんに
いま行ってきたばかりのマッサージ店に電話をかけてもらう。
店の人が調べてくれたが見つからない。
一緒に持ってきたiPhoneでなくした携帯にかけてみると
留守番電話になっている。
僕の携帯はこの街のどこかでまだ生きている。


さぁ、このあと、どうするか。
なにか手は見つかるか。