宮部みゆき『ばんば憑き』(2011)


ほんの数頁読むだけで
読者を江戸の街に引き込む筆力の作家は
どの時代でもそう多くはいない。
宮部みゆきは現存する作家でそのひとりである。
『ばんば憑き』を読む。


ばんば憑き     

ばんば憑き    


六話構成。
いずれも物の怪ばなしなのだが
怖いと言うより切なかったり、いとおしくなったりする。
物の怪が人間より人間らしいというのか。
旅の時差で眠れぬ夜、濃密な日本語に耽溺するのは
おとなの贅沢である。




中学一年のときに
M先生の影響で読書の習慣を身につけておいて本当によかった。
おかげでシンガポールで眠れぬ夜も
関空で機内に閉じ込められていても
僕は江戸の街で遊んでいられる。



(文中敬称略)