秘湯会、ホームグラウンドを失う


秘湯会は春夏秋冬、四季折々、
山のいで湯を巡るのが主たる活動である。
正規会員は会長、副会長の2名。
世界最小の温泉・銭湯愛好会として知られる。
秘湯会のホームグラウンドは地元の井戸水銭湯E湯だ。
そのE湯が突然、来年1月中旬に廃業することになった。



E湯は銭湯だけでなく、コインランドリー、駐車場、マンション、
セブンイレブンへの土地貸しなど多角経営に早くから取り組んでいた。
30代の若旦那が近頃は熱心に働いていたから
いくら銭湯に逆風が吹いているとしても
まだ当分は大丈夫だろうと読んでいたのだ。



おかみさんの話を聞いていると、
その多角経営が足を引っ張ったらしい。
バブル時代に銀行から借りた資金の返済に固定資産税がのっかり
どうにもお金が回らなくなってきた。
さらには相続税が待っている。
おかみさんの家はそもそも代々続いた大地主の農家である。



E湯は来年ちょうど創業50年を迎える。
いまでも客の入りは上々である。
なんともはや。
常連客は存続嘆願のために署名活動を開始すると言うが、
こと巨額の回転資金が原因であるからなんともなるまい。


我が地元はE湯の他に軟水銭湯S湯、M湯がある。
自転車で少々足を伸ばせば
それ以外にも4軒の銭湯が残る希有の地域である。
とは言え、ホームグラウンドを失うのはつらい。
途方に暮れる秘湯会である。