曽野綾子『老いの才覚』(2010)


曽野綾子『老いの才覚』(2010)を読む。
30代後半で『戒老録』を書いた曽野は今年80歳。
老いをどうとらえるか、自分はどんなふうに老いることを望むか。
40年ほど隔てた曽野の二つの時間軸で
「老い」を眺めることが興味深い。


老いの才覚 (ベスト新書)

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年長の方たちの生き方をとやかく言うことは
得てしてはばかられるが曽野の考えは明快である。
年をとればこそ周囲に甘えてばかりではいけない。
自立と自律が大切であると静かに、ぶれることなく主張する。
その主張が妙に心地よいのだ。



曽野は40代後半に失明の危機に陥る。
作家として致命的であり、発狂しそうになり自殺も考えた。
しかし、その後の手術が成功し視力を取り戻した。
そればかりか、いまも自分のペースで
日本で世界で仕事を続ける。



日々、死を思いながら生きること。
とてもむつかしいことではあるが、それを考えさせられる。
いまの時代にこの本がベストセラーになったことも
むべなるかな、と思う。


(文中敬称略)