デジタルノート版・極私的ベスト2011(その2)


書籍以外の項目でベスト3を選んでみた。
自分自身の備忘録のようなものなので
年末の座興としてお読みいただきたい。


●道具・ツール篇


仕事や生活を楽しみ円滑にするには
自分に合った道具・ツールを見つけることである。
日々使いこなす道具が見つかったときはうれしい。


1. MacBook Air(11インチ/128GB)



4月に出向元の会社に帰任するとき
まっ先に買ったもののひとつである。
以来、会社で自宅で出張先で大活躍してくれている。
キーノートに動画、静止画を貼り込み、
アニメーションを駆使してスライドを作るのは愉しみになった。
これひとつあれば世界中で
「出前プレゼンテーション」ができる時代になったのだ。
サトナオさんが提唱するノマド遊牧民)に
一歩近づけたような気がしてうれしい。


2. ELPA/LED STAND LIGHT SPOT-LLSTK 3/W LED 3灯




夏頃からたびたび眼に不調が現れた。
原因は分からなかったが
眼を酷使していることはおおいに反省した。
暗い場所で本を読むことは
眼の負担になるに決まっているのだ。
電器店を探してこの灯りに出会った。
1WのLEDを3灯使い、電球に近い光を放つ。
小型軽量なので寝床に運ぶのもラクチンだ。
眼の不調はいまのところ静まっている。


3. iHome/iHM63



MacBook Airで「出前プレゼンテーション」するときに
ひとつ気になるのは音である。
内蔵スピーカーだけでは
数人から数十人相手のプレゼンテーションでは
音量、音質ともに物足りない。
かと言って出張などに持ち歩くなら
重くてかさばるスピーカーでは要をなさない。
結局ネットでこの製品に出会い解決した。
旅に持ち歩くだけでなく
自宅でジャズを聴く際にも重宝している。
一台110gと小さいくせに重低音の表現力があるのだ。
iPhoneiPadと接続して使うこともできる。


●映画、演劇、イベント篇


映画、演劇、イベントをひとまとめにした。
それぞれ単独では基礎となる数字が大きくなかったからだ。


1. Christopher Nolan "Inception" (2010)


インセプション [DVD]

インセプション [DVD]


いつの時代にも世の中には才人がいるものである。
一度目は物語に引きずり込まれ、
二度目は制作者の視点で観た。
夢を媒介に複数世界を入れ子細工にする発想。
それを映像に定着するクラフトの集積。
舌を巻き、脱帽するのみである。
こうした作品に出会うと、
観客席で楽しむ側に回る他ない。


2. Alex Roman "The Third & The Seventh" (2009)



この作品には夏に出かけたArs Electronicaで出会った。
オーストリアリンツで開かれるフェスティバルである。
人間がほとんど登場しない静謐な映像である。
建築物や図書館が舞台になる。
ふらり覗いて見始めたら中途でやめることができなかった。
愕然とするのは作品を見終わった後である。
この作品はすべてがコンピュータで作られている。
しかし、ハリウッド映画のようにそれを売り物にするのでなく、
コンピュータで作ったことすら気取らせない。
それは映像にとってなんら本質でないことを監督自身が知っている。
映画は大予算で、巨大チームでなければできない
というこれまでの常識をものの見事に裏切る。


3. 2011東京獺祭の会@都市センターホテル




世の中にこんな楽しいイベントがあるとは知らなかった。
獺祭(だっさい)で知られる酒蔵が
得意、メディアを招待して開く新酒発表会に
紛れ込ませてもらった(もちろん有料)。
僕の大好きな獺祭全銘柄を杜氏、社員がふるまってくれる。
桜井社長は日本酒のうまさを伝えたくて
海外にも積極的に進出している。
気概あるリーダー、夢に挑むグループ。
ここにも日本の誇る技術、製品があるのだ。


次点 第14回文化庁メディア芸術祭入賞作品展@国立新美術館




今年は三度通った。
カンヌのFestival of Creativityと同じくらい
僕が毎年楽しみにしているフェスティバルである。
マンガ、アニメーション、ゲーム、映像、ツールなど
実に幅広い領域で創造性を競い合う。
そこに飛び散る火花が美しい。
技術が発明されると創造性に影響を与えることが
ここに来るとよく理解できるのだ。


●居酒屋篇


友人知人と行く店でなく、
ひとりでふらり寄り、一二時間を過ごす店である。
昨年開拓した店を再訪問することが多く、
初めての店の数は限られている。


1. 斎藤酒場 (十条)




斎藤を愛してやまなかった
作家・中島らもの気持ちがよく分かる。
奇跡的に残された昭和の共同お茶の間である。
いい店は主人、店員、客が一緒になって創り上げていくものだ。
けやきのテーブルでゆらゆらしているうちに
平成から昭和へ帰ってゆく。
大人たちの「どこでもドア」がここにある。
お銚子170円。
串カツ、カレーコロッケに刻みキャベツ少々のセット220円。
つましく、うまい料理で酒を呑む。
仕事や私生活でややこしかったあれやこれやが、
ほどけていくような錯覚に陥る。


2. ゑびす(四ツ木)(初)




いい店は入った瞬間に分かる。
それは酒飲みの本能である。
ある休日、京成に乗って荒川を渡り、
ゑびすにやってきた。
カウンタ−に腰かけ、処狭しと貼られた品書きを眺めるうちに
かつての邦画の脇役のひとりになったような気分になる。
聞くともなくあたりの会話を聞いていると、
メディアが報道するのとは異なる市井の声がする。
三杯だけ酒を飲み、ほろ酔いで脇役を演ずることを楽しむ。


3. (同点)鈴傳 (四ッ谷)




会社帰りに一時間だけふらり寄る。
角打ち、立ち飲みの老舗である。
おばちゃんふたりが総菜担当で
刺身以外はどれも小皿で350円。
定番・富山の満寿泉(ますいずみ)は正一合380円。
飲み口がさらりとしている。
季節が冬なら燗を頼むとよい。
燗付け器を使って絶妙な温度で付けてくれる。


3. (同点)富士屋本店 (渋谷)




地下へと階段を降りていくと
そこは飲ん兵衛たちの立ち飲みパラダイス。
ここも入ったとたん気に入った。
イタリアの居酒屋あたりにでもいそうな女主人が
てぎわよく客をさばき、注文を取る。
男たちはアスリートのようにてきぱき働く。
ハムカツ。ハムキャ別。湯豆腐。マカロニサラダ。
ビールを飲んだ後は緑茶割り
店でいいちこをグリーンボトルに詰め替えてくれる。
三杯ほど飲めてほろ酔いにちょうどいい分量になる。


●旅する都市篇


今年は出張が多く、
6月から数えて通算64日海外に出ていた。
すべて仕事なので自分の自由になる時間は限られているが、
記憶に残る都市を選んでみた。
期せずして初訪問の3都市が並んだ。


1. 瀋陽(初)




中国国際広告祭に参加するため初めて訪れた。
かつて奉天と呼ばれた都市である。
1月の平均気温がマイナス11℃。人口790万人。
東北地方随一の賑わいを誇る。
目抜き通りに物乞いがいたり、
投資用の高層マンションが廃墟の如く建ち並んでいる。
現代中国の光と影のコントラストを垣間見た。
僕は中国のことはなにも知らないと思い、
帰国して中国史を勉強しはじめた。
指揮者・小澤征爾の生まれ育った土地でもある。


2. リンツ(初)




オーストリア第三の都市。
夏の終わりから秋の始めにかけて
メディアアートの祭典、Ars Electronicaに参加した。
40年以上前に街おこしで始まったフェスティバルが
いまでは多様な領域をカバーするイベントになった。
街の住人たちが教会で実施された音の実験イベントに
気軽に参加するなど一体感があるのが素晴らしい。


3. ジャカルタ(初)




経済成長とともに若いエネルギーが充満している。
一方では半ば忘れ去られた博物館に
かつての文明、文化のかけらが眠っている。
その対比が現在のジャカルタである。
街をひとり歩きできない安全状態がこの国の現実。
アジアの首都にもまだそんな場所があるのだと知った。