川上弘美『センセイの鞄』を読む。
<狐>の書評を読んでいたら手に取ってみたくなった。
速読でも多読でもなく、
<狐>が薦める遅読を意識してページを繰った。
遅読は味読(僕はこの言葉を知らなかった)でもある。
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/09/28
- メディア: 文庫
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センセイとツキコさんの出会いからの淡々とした交友を
サトルさんの居酒屋をベースキャンプに描いていく。
平易でありながらリズム感のよい文章である。
できればセンセイとツキコさんの距離が縮まりすぎず
読者としてはぐらかされたまま終わってほしいなぁと感じていた。
最後の二章「公園で」「センセイの鞄」は
二人が恋など意識しませんように、とハラハラ読んでいた。
僕が一番好きなのは「干潟ー夢」。
いつまで飲んでも飲み干せないカップ酒を飲みながら
二人が佇む場所はいったいどこなんだろうと愉しんだ。
副題は「ー夢」を外してただ「干潟」としてほしかったな。
夢であると作者から決めつけられてしまうより、
夢か現か幻かと漂っている方が読後感が深くなると僕は思う。
2001年に発表され谷崎潤一郎賞(第37回)を受賞して11年。
メディアの喧噪の中でなく、
いまごろひっそりと静寂に包まれながら遅読することが
僕には敵っていた。
- 作者: 山村修
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/08/09
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- 作者: 狐
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/01/11
- メディア: 文庫
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2001年谷崎潤一郎賞審査員は以下の6名。
池澤夏樹
井上ひさし
河野多恵子
筒井康隆
日野啓三
丸谷才一
(文中敬称略)