澤本嘉光『おとうさんは同級生』(2012)


自分はどんな高校生活を送っていただろうか。
はるか彼方の高校時代を思い出そうとしながら
澤本嘉光『おとうさんは同級生』を読む。


おとうさんは同級生

おとうさんは同級生


ヤクザ毛飯会、日横組は商店街の再開発をめぐり抗争している。
抗争に巻き込まれ危険にさらされた17歳の娘を守るために
娘の高校に同級生として侵入する45歳のヤクザ、花島翔。
小説として無理な舞台設定と思うかもしれないが、
この作品は文字で書かれたマンガである。
マンガ小説として一級品である。
会話のテンポがいい。ユーモアがある。



校則や受験に心を奪われている高校生たちの日常に
不器用で一直線で頭のよくない翔が飛び込み、かき回す。
荒唐無稽のようでいて
澤本は青春小説の方程式に忠実である。
この小説を澤本組によって映像化してもらいたい気もするし、
小説のままそっとしておいてほしい気もする。



澤本は広告会社に勤務し、
ソフトバンク・ホワイト家族などのシリーズを手がける
CMプランナー/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。
いずれこの作品が文庫化され、
より多くの中高生の読者を持てたらいいなと思う。
佐野研二郎のあえて古典的な装幀も青春小説にふさわしい。


(文中敬称略)