この本が28万部を突破し新書大賞1位(2011年) を取ったのなら
日本人の科学に対する関心は少しも衰えていない。
村山斉『宇宙は何でできているのか
ー素粒子物理学で解く宇宙の謎』(2010)を読む。
村山は2007年に発足したIPMU(東京大学数物連携宇宙研究機構)の
初代機構長。1964年生まれである。
- 作者: 村山斉
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/09/28
- メディア: 新書
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村山はIPMUの活動の目的、成果を
僕たち一般の人間にも伝えようと
地道なコミュニケーションを続けている。
本書も入門書でありながら
素粒子物理学の最新成果まで意欲的に取り入れている。
読者をリスペクトしている姿勢が伝わってくるのだ。
極大の宇宙も、極小の素粒子の世界も、
分からないことだらけであることが分かる。
宇宙や素粒子の活動を説明する法則解明に近づいた
と思った次の瞬間に、その法則をくつがえす事実が見つかる。
犯人が見つかったと思った瞬間に再び混沌の闇に突き落とされる
連続ミステリー小説のようである。
人類が解明した部分と解明できない部分の境界線を
本書は僕たちに見せてくれる。
太陽や地球が存在することや、
人間を含む生物がこの世に存在すること自体が
まるで奇跡であることを科学の成果が淡々と教えてくれるのだ。
あ〜、僕は宇宙の謎をもっともっと読み解きたいよ。
僕の一生分の時間くらいじゃ
とても追いつかないのは分かってるんだけど、ね。
だからこそIPMUのような組織や研究者たちの予算を
むやみに削るのは反対だ。国の文化をやせさせる。
(文中敬称略)