村山斉『宇宙は何でできているのか』(2010)


この本が28万部を突破し新書大賞1位(2011年) を取ったのなら
日本人の科学に対する関心は少しも衰えていない。
村山斉『宇宙は何でできているのか
素粒子物理学で解く宇宙の謎』(2010)を読む。
村山は2007年に発足したIPMU(東京大学数物連携宇宙研究機構)
初代機構長。1964年生まれである。


宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)


村山はIPMUの活動の目的、成果を
僕たち一般の人間にも伝えようと
地道なコミュニケーションを続けている。
本書も入門書でありながら
素粒子物理学の最新成果まで意欲的に取り入れている。
読者をリスペクトしている姿勢が伝わってくるのだ。



極大の宇宙も、極小の素粒子の世界も、
分からないことだらけであることが分かる。
宇宙や素粒子の活動を説明する法則解明に近づいた
と思った次の瞬間に、その法則をくつがえす事実が見つかる。
犯人が見つかったと思った瞬間に再び混沌の闇に突き落とされる
連続ミステリー小説のようである。



人類が解明した部分と解明できない部分の境界線を
本書は僕たちに見せてくれる。
太陽や地球が存在することや、
人間を含む生物がこの世に存在すること自体が
まるで奇跡であることを科学の成果が淡々と教えてくれるのだ。



あ〜、僕は宇宙の謎をもっともっと読み解きたいよ。
僕の一生分の時間くらいじゃ
とても追いつかないのは分かってるんだけど、ね。
だからこそIPMUのような組織や研究者たちの予算を
むやみに削るのは反対だ。国の文化をやせさせる。


(文中敬称略)