早野透『田中角栄ー戦後日本の悲しき自画像』(2012)


早野透田中角栄ー戦後日本の悲しき自画像』を読む。
著者渾身の中公新書書き下ろし。
本文396ページ、主要参考文献4ページ、年譜7ページ。
いま、なぜ、田中角栄なのか。
金権政治の果てに日本戦後政治史で
忘却されつつある政治家ではないのか。
どっこい、そうではないことが
本書を読み進めるうちに分かってくる。


田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)

田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)


越後の馬喰のせがれ角栄が、
おのれの才覚でいかに首都で人脈を開拓し権力を握るか。
その物語には歴史の必然を感じた。
角栄が残した新幹線、道路、福祉政策の上に
今日の繁栄がのっかっていることを誰もほおかむりはできまい。
もし、自分が雪深い越後の農家に産まれたなら、
きっとなんの疑問もなく角栄を支持していたろうと思えるのだ。



角栄の推進した原子力政策は3.11に行き着いた。
経済と政治の原理原則のぶつかり合い、
アメリカ、中国始め各国との外交。
僕たちが生きる平成の現実は
角栄時代と歴史の線でつながっている。
多くの課題は当時と比較しても
少しも解決に向かって前進していない。
12月の衆院選都知事選投票前に
自分なりに角栄以前以後を整理して判断するのに本書は役立つ。



早野は1968年朝日新聞社に入社。
政治部記者として角栄のアップダウンの政治人生を
間近で目撃・取材してきた。
2010年より桜美林大学教授。
事実を元にした骨のある田中角栄論を久しぶりに読んだ。


決定版 私の田中角栄日記 (新潮文庫)

決定版 私の田中角栄日記 (新潮文庫)


(文中敬称略)