谷沢永一『紙つぶてー自作自注最終版』(2005)


遙けし山脈を新年早々歩ききったような気分である。
谷沢永一書評コラム『紙つぶてー自作自注最終版』 を読む。
読み終えて人名索引16頁、書名索引31頁を通読してみる。
本文943頁から必要箇所をもう一度参照する。


紙つぶて―自作自注最終版

紙つぶて―自作自注最終版


本書の元になった『完本・紙つぶて』の書評コラム執筆に
1969年から1983年まで足掛け15年。
各600字の全455篇に付けた自作自注執筆に
本書刊行一年前の2004年までさらに20年。
谷沢の読書人生35年分のエッセンスがこの一冊に詰まっている。
まさに個人編纂の読書辞典であり、
充実した索引から折に触れ読み返すことだろう。



宮崎市定小西甚一といった僕の敬愛する先生方の著作が
高く評価されている反面、
この人がと思う人の著作が歯に衣着せぬ論調で批評されている。
(二三例をあげれば羽仁五郎梅棹忠夫和辻哲郎)。
どの一篇も谷沢の個人的感情だけが前面に立つのでなく、
事実、出典を根拠にした意見であるだけに小気味いい。



もちろん、僕も谷沢の意見、考えすべてに
賛成する訳ではない。当たり前のことだ。
なれ合いのようなジャーナリズム、書評、
感情的なばかりで説得力のない論調に辟易している身には、
谷沢紙つぶてに胸のつかえがおりる。



類い希な知性の、狂気の著作出版を実現した
萬玉邦夫、西山嘉樹の編集二氏に惜しみない拍手を贈る。
「自作自注最終版」ではないが、
入手しやすい文庫版のデータを下記にリンクしておく。


紙つぶて(完全版) (PHP文庫)

紙つぶて(完全版) (PHP文庫)


(文中敬称略)