ボスフォラス海峡の野良猫


時差を調整するために
一日早く現地に乗り込んでいる。
晩のウェルカムディナーまでは自分の時間だ。
街を歩き、トラムに乗り、
ボスフォラス海峡を越えてグランバザールを覗く。



どこもかしこも人いきれで、
うっかり土地の神さまとすれ違っても気づきそうにない。
千店だか二千店だか数えることもできない小店を冷やかし、
ときに日本語の話せる店員と一言二言交わす。




バザールの中の小さなカフェ。
親父がひとりでやっていて、
不在のときは常連らしきあんちゃんが店番だ。
チャイを頼むと1トルコリラ(=55円)。
一緒に付いてくる小ぶりの角砂糖二個を溶かすと、
茶葉の渋みと相まってなかなかうまい。




同居人に頼まれた布と自分用にマフラーを買う。
東京で今シーズン使うのにまだ間に合うかな。
やみくもに冷やかすのでなく、
なにか目的があって店を回るのは愉しい。
もちろん値切るのも買い物の醍醐味の一部だ。



行きがけに見つけた海峡沿いのオープンカフェに寄り、
軽食、チャイをいただく。
この店ではお嬢さんが注文を取ってくれてチャイ一杯3リラ。
トラム一回分の乗車賃と同額だ。
毛づやのよろしい野良猫が僕のテーブル脇に礼儀正しく座るので、
チーズとトルコハムのトーストを少し分けてやる。



ボスフォラス海峡はアジアとヨーロッパの境目である。
北に上がれば黒海、南に下ればマルマラ海
僕たちが宿泊しているホテルはヨーロッパ側にある。