木村俊介『善き書店員』(2013)


同僚が書いた本を見てみようと地下の書店を覗くと、
本棚から不思議な引力を感じた。
寄藤文平のブックデザインの力だったか。
木村俊介『善き書店員』(2013)を読む。


善き書店員

善き書店員


全国の6人の書店員にロングインタビューした記録である。
木村は自らをノンフィクション作家と呼ばず、
インタビュアーであり続けることにこだわる。
確かに6人(佐藤純子のみ2回)の話に耳を傾けていると、
「アマゾンや電子書籍に追われる街の書店員たちの苦悩」
といった紋切り型まとめがいかに薄っぺらであるか気づく。



市井の人たちのインタビューひとり当たりに
40頁を費やすことは普通のメディアではできない。
そこが木村の仕事の特徴である。
アメリカ・ジャーナリズムの健全性を担保している
調査報道*の手法を思い浮かべる。
始めに結論ありきでなく、
徹底的に市井の現場から問題をあぶり出す手法だ。



出版したミシマ社社長・三島邦宏と木村が
互いに新人だった頃から十数年の関係があって生まれた本だ。
一見平凡のように見えるからこそ貴重なノンフィクションだと思う。
結局この本を買って、同僚の本はひとまず見送ってしまった。


   *参考文献:アメリカ・ジャーナリズムの調査報道に詳しい


官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪

官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪


(文中敬称略)