竜田一人『いちえふー福島第一原子力発電所労働記(1)』(2014)


福島原子力発電所の復旧現場からのドキュメントとしては
鈴木智彦『ヤクザと原発ー福島第一潜入記』が面白かった。
自らの体験を漫画で表現したのがこの作品だ。
竜田一人(たつた かずと)『いちえふ(1)』を読む。
副題は「福島第一原子力発電所労働記」である。


いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニング KC)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニング KC)


2012年6月、竜田(常磐線竜田駅に由来するペンネーム)は
6次下請け作業員として、福島第一で働き始める。
半年の労働で会社が定めた年間被爆限度量に達し、
首都圏にある自宅に戻って自らの体験を漫画で描き始める。
新人賞MANGA OPEN大賞を受賞し、「モーニング」で連載が始まった。
竜田のデビュー作である。



通常メディアが報道しない、ごくごく当たり前の日常がある。
簡単に復旧できるわけもない現場で働く人間たちの姿が淡々と描かれる。
現場を精確に再現し、そこで働く人間の感情を描こうとする試みに
漫画という手法がはまったように思う。



アメリカ、ドイツ、スイス、フランス、イタリア、
イギリスなどのメディアから取材が来ていると腰巻きにある。
長期連載は不可能な題材と思うが(2014年秋第二巻刊行予定)、
竜田の試み、それを実現した「モーニング」編集部の決断が素晴らしい。


ヤクザと原発 福島第一潜入記

ヤクザと原発 福島第一潜入記


(文中敬称略)