湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』(2012/2014文庫版)


黒澤明監督の映画『羅生門』、
原作となった芥川龍之介の小説『藪の中』をほうふつとさせた。
湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』を読む。
文庫化、映画化のタイミングの連携も助けたのか、
僕が購入した時点で70万部突破である。



湊のデビュー作『告白』が実に面白く、
松たか子主演の映画も愉しめた。
登場人物の告白を連ねていく手法は『告白』を踏襲。
どれが噂かどれが真実か、
読者を混乱させていくストーリーテリングが見事だ。



資料としてソーシャルメディアのタイムラインのコメント、
殺人事件を取り上げた週刊誌の記事を掲載している。
この資料もすべて湊が書いている。
ここまで書き込むのかというディテールが
メディアに翻弄される僕たちのいまを精確にスケッチしている。
現代版『藪の中』でありながら、
湊自身のスタイルになっている。


容疑者・城野美姫が真犯人でないことは冒頭から匂わせるが、
じゃいったい誰が殺人犯か?
城野自身もメディアに翻弄され
他人を疑い恨むごく普通の人間である。
単なる被害者とは描いていない。



真犯人が明らかにされた後、
冒頭から読み返したくなったのも物語の魅力のなせるわざだろう。
湊の作品を映像化したくなる
プロデューサ−、監督がいるのも納得である。
湊の今後の作品にも期待したい。


告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)


(文中敬称略)