破天荒な生涯とも言えるが憎めない。
自分のそばにいたら付き合うのは結構骨が折れるだろう。
マルクス「資本論」を生涯で三度翻訳した男、
岡崎次郎の伝記を読む。
題して『マルクスに凭(もた)れて六十年 自嘲生涯記』。
- 作者: 岡崎次郎
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 1983/02
- メディア: ?
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この本は法政大学出版局から
発行されることになっていた。
再校の段階まできてから出版局は
法政大学並びにその教職員や学生を侮辱する文句を
書き直せと言ってきた。
私は侮辱しているとは思わなかったので
それに応じなかった。
話は物別れになり、出版作業は中止された。
(本書「序」p.3)
岡崎の旧友・本吉久夫が
青土社から出版できるように奔走した。
その結果が本書である。
満州に渡り満鉄調査部でぶらぶらしていた時代の話。
「資本論」やマルクス関連図書翻訳で
一億五千万円の印税を稼いだが一円残らず使ってしまった話。
向坂逸郎に依頼され共訳で出版されるはずだった岩波版「資本論」で
岡崎の貢献は下訳扱いにされ分配も減らされた話。
向坂との愛憎半ばの関係は本書の読みどころのひとつだ。
「プロレタリアートの独裁」「暴力革命」には
死ぬまで固執すると宣言する話。
- 作者: カール・マルクス,岡崎次郎
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 1972/03
- メディア: 文庫
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べらんめぇで講談風の語り口は
およそ型にはまったアカデミアの世界から遠い。
岡崎自身も九州大学、法政大学などで務めた教授職は
食べるためとはいえ本意でなかったと打ち明けている。
本書を読んで僕は岡崎の人柄を知り、
岡崎が凭れた人間マルクスにますます興味を引かれた。
岡崎三度目の「資本論」翻訳、大月書店版国民文庫全9冊も
古書サイトで見つけ購入した。
「資本論」の勉強はこれからも続けていく。
岡崎は80歳を迎える年に行方不明になった。
長年連れ添った夫人と死出の旅に出たようだ。
クレジットカードの使用記録は残っているが、
二人の遺体等は見つかっていない。
(以上、wikipedia記事による)
本書は軽快な語り口ではあるが、
岡崎渾身の遺著でもあった。
本書は絶版で古書市場では15,000円以上する。
僕は京橋図書館で見つけて借りてきた。
どこかの出版社が文庫本にしてくれるといいのだが、
どうだろう?
今度はどうですか、
法政大学出版局のみなさん?
(文中敬称略)