田代和生(かずい)『書き替えられた国書』(1983)


事実は小説よりも奇なり。
NHKが歴史ドラマにしてくれないかなぁ。
田代和生『書き替えられた国書
—徳川・朝鮮外交の舞台裏』(1983)を読む。



徳川時代に朝鮮との貿易を一手に請け負っていた対馬藩
幕府と朝鮮国王の間で外交の役割も果たしていた。
両国に上下関係がつかぬようバランスを取るために
あろうことか長年に渡って国書を書き換えていた。
主君宗家を家臣柳川調興が告発し、将軍家光の元で裁きが下される。
その結果は意外なものだった。


新・倭館 (ゆまに学芸選書ULULA2)

新・倭館 (ゆまに学芸選書ULULA2)


僕が憐れだと思ったのは、
流罪となった柳川調興、玄方の二人だ。
玄方が赦免されたのは結審から23年後の1658年。
その時、71歳。3年後に没している。
柳川調興は結審から49年後の1684年、
ついに赦免されることなく、
津軽の地で82歳で亡くなっている。
お家騒動が日朝外交関係に影響を与える事件に拡大した。
その咎の見せしめのために
国家は二人の人間の23年、49年という時間を奪った。



岡田英弘著作集第7巻「歴史家のまなざし」収録の「書評」で
本書の存在を知った。
港区立高輪図書館蔵書。


(文中敬称略)