佐藤優『超訳 小説・日米戦争(原作・樋口麗陽)』(2013)


日米が再び戦争になったら……。
荒唐無稽に聞こえるが、妙にリアリティがあった。
佐藤優超訳 小説・日米戦争』(2013)
(原作・樋口麗陽『日米戦争未来記』(1920))を読む。


超訳 小説日米戦争

超訳 小説日米戦争


20世紀末、日米開戦。
世界有数の日本海軍はアメリカの秘密兵器「空中魚雷」によって
早々に第一艦隊、第二艦隊を全滅させられる。
米太平洋艦隊は日本本土をめざし、
列島が阿鼻叫喚の地獄に追い込まれるのは必至の瀬戸際だ。


戦争を煽る空想小説ではなく、
樋口は日米戦争回避のために本作を書いた。
佐藤は現代日本にある「反米」の空気を
冷静に知的に分析する必要があるとしてこの作品を超訳で復刊した。
171頁の本編に続いて111頁におよぶ解題を付けたのもそのためだ。



大正デモクラシーと呼ばれた時代背景を復習しながら、
年表を参照しつつ本編、解題を読んでいく。
「歴史の反復」「関係の類比」と佐藤が呼ぶ思考法を学び、
現代日本に応用するには絶好の教材にもなる。



作者の樋口についてはほとんど知られていないが、
小説に反映されたインテリジェンス能力の高さから、
同盟通信幹部か、大新聞の編集委員クラス幹部と佐藤は推測する。
佐藤優『危機を覆す情報分析
 〜知の実戦講義「インテリジェンスとは何か」〜』(2016)p.89)
アメリカで進行する大統領予備選の行方を眺めながら、
日本にとってより悪くない選択は何か、僕も考えてみたい。
(世田谷区立経堂図書館蔵書)



 (写真上:国立国会図書館近代デジタルライブラリー」サイトから引用)


(文中敬称略)