金持ちの男の老人の財産を狙って、
69歳の武内小夜子が手練手管で「後妻」の罠を仕掛ける。
恐ろしい、けれども現実的な職業があったものだ。
黒川博行『後妻業』(単行本2014)を読む。
- 作者: 黒川博行
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/08/29
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (21件) を見る
村上たかしのマンガ連載『後妻業の女』
(「ビッグコミックオリジナル」)が始まった。
これが、なかなか面白い。
映画公開を記念してコミック化した作品だ。
映画では武内役を大竹しのぶが演じていると知り、
その道のプロフェッショナルというのは
エグく、ピタリの配役をするもんだと感心した。
そんなタイミングで原作小説を手にした。
(村上たかし画『後妻業の女』。
サイト”Cinema Cafe.net"より引用)
悪党がうまく書かれている物語は面白いものである。
本作も2/3くらいまでは読者をグイグイ引き込んでいく。
ラスト1/3あたりで登場人物がやや複雑になり、
その分、悪が分散して力を弱める感じがした。
物語が一気に失速したように思えた。
ゴキブリのようにたくましかった武内の最期はあっけない。
「結婚相談所」を経営する武内の相棒・柏木、
ふたりを追い詰めようとする元マル暴担刑事・本多。
それまで魅力的だったワルたちのラストもなんだか物足りない。
本物の現実世界の悪党は
小説の世界よりもっとしぶとく生き延びているではないか。
少々不満は残るものの、
今日的なテーマで413頁(単行本)を読ませる黒川の筆力を感じた。
作者夫人で日本画家の黒川雅子装画が怖くていい。
(黒川夫人の父が画のモデル)
映画化のタイミングに合わせて、文庫になった。
- 作者: 黒川博行
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/06/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (12件) を見る
(文中敬称略)