黒川博行『後妻業』(単行本2014/文庫2016)


金持ちの男の老人の財産を狙って、
69歳の武内小夜子が手練手管で「後妻」の罠を仕掛ける。
恐ろしい、けれども現実的な職業があったものだ。
黒川博行『後妻業』(単行本2014)を読む。


後妻業

後妻業


村上たかしのマンガ連載『後妻業の女』
(「ビッグコミックオリジナル」)が始まった。
これが、なかなか面白い。
映画公開を記念してコミック化した作品だ。
映画では武内役を大竹しのぶが演じていると知り、
その道のプロフェッショナルというのは
エグく、ピタリの配役をするもんだと感心した。
そんなタイミングで原作小説を手にした。


   (村上たかし画『後妻業の女』。
   サイト”Cinema Cafe.net"より引用)


悪党がうまく書かれている物語は面白いものである。
本作も2/3くらいまでは読者をグイグイ引き込んでいく。
ラスト1/3あたりで登場人物がやや複雑になり、
その分、悪が分散して力を弱める感じがした。
物語が一気に失速したように思えた。



ゴキブリのようにたくましかった武内の最期はあっけない。
「結婚相談所」を経営する武内の相棒・柏木、
ふたりを追い詰めようとする元マル暴担刑事・本多。
それまで魅力的だったワルたちのラストもなんだか物足りない。
本物の現実世界の悪党は
小説の世界よりもっとしぶとく生き延びているではないか。


少々不満は残るものの、
今日的なテーマで413頁(単行本)を読ませる黒川の筆力を感じた。
作者夫人で日本画家の黒川雅子装画が怖くていい。
(黒川夫人の父が画のモデル)
映画化のタイミングに合わせて、文庫になった。


後妻業 (文春文庫)

後妻業 (文春文庫)


(文中敬称略)