「E.T.方式」でいくしかない


村上春樹『職業としての小説家』
「第五回 さて、何を書けばいいのか?」から以下引用。


職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)


  これはもう「E.T.方式」でいくしかないと、僕は思うんです。
  裏の物置を開けて、そこにとりあえずあるものを
  —もうひとつぱっとしないがらくた同然のものしか見当たらないにせよ—
  とにかくひっかき集めて、あとはがんばって、
  ぽんとマジックを働かせるしかありません。
  それ以外に僕らが他の惑星と連絡を取り合うための手だてはないのです。
  とにかくありあわせのもので、
  がんばるだけがんばってみるしかない。


  でももしあなたにそれができたなら、
  あなたは大きな可能性を手にしたことになります。
  それは、あなたにはマジックが使えるのだという素晴らしい事実です
  (そう、あなたに小説を書けるというのは、
  あなたが他の惑星に住む人々と連絡を取り合えるということなのです。
  実に!)。


                       (新潮文庫pp.133-134)


(文中敬称略)