死ぬまでに、私を使い切りたい


きょうのスクラップブックから。
朝日新聞2017年2月28日朝刊。



2月6日付東京本社版「ひととき」に掲載された
山田くみ子さん(77)の投書が話題になっている。
投書の要旨は以下の通り。


   夫が要介護5と認定され、
   介護付きのホームに入った。
   年金を使ってもまだ足りないほどの費用がかかる。
   「下流」ばあさまの生活が始まった。
   (中略)


   バスに乗り、終点の城ヶ島まで行く。
   海岸の岩の上にタオルを敷き、
   持参した弁当を食べる。
   冬のひだまりに包まれ、
   再びバスに乗って少し戻り
   夫のいるホームに向かう。


   幼子のような顔で夫が笑う。
   私はほっこりした気分で笑い返す。
   いちばん幸せを感じる瞬間でもある。
   今年も「花流」ばあさまを楽しもう。



山田さんを訪ねて
長谷川陽子記者が会いに行く。
山田さんの言葉を拾う。


   それだけ考えていたら、
   落ち込んで自分が壊れてしまうでしょ。
   だから色んなことに目を向けて、
   花びらの数を数えたり、
   バスの窓からスズメのお宿を探したり、
   私何でも楽しいんです。


   元気なときは
   腹が立つこともありましたけど、
   今は主人がいちばん大事な人っていう感じがしますね。


   私の財産は私なんだって
   (と15年前、テレビ番組で知って: 引用者補注)  
   すごく感動してね。
   自分という財産をどう使おうと
   自由ですもんね。
   ですから、死ぬまでに
   私を使い切りたいと思っているんですよ。



山田さんの初投稿を朝日が採用した。
Good job!