読者の気持ちになって書いてほしい(池上彰)


スクラップブックから
朝日新聞2018年12月21日朝刊
池上彰の新聞ななめ読み
「あおり運転」裁判の判決
専門用語かみ砕く努力を


毎月1回、池上さんがどの記事を取り上げて
朝日他各紙をななめ読みするのか、いつも興味津々です。
12月は、昨年6月東名高速道路でワゴン車が
「あおり運転」で停車させられ、
大型トラックによる追突で夫婦が死亡した事件でした。


   12月15日付朝刊各紙のうち朝日の1面記事を読むと、
   次のような文章がありました。
   <自動車運転死傷処罰法は危険運転の要件を
   「重大な危険を生じさせる速度で運転する行為」としている>


   あれれ、この記事の冒頭では
   「危険運転致死傷罪の成立を認め」とあるのに、
   続く本文では「自動車運転死傷処罰法」という法律名が登場します。
   この二つは、同じものなのか、別のものか、
   記事を読んでもわからないのです。
   (略)


   ですから、朝日の記事で
   「自動車運転処罰法違反」という名称を使いたければ、
   「自動車運転処罰法が定める危険運転致死傷罪」と書いておけば
   よかったのではないでしょうか。
   (略)


   もっと読者の気持ちになって原稿を書いてほしいですし、
   現場の記者がこういう原稿を書いてきたら、
   デスクが注意を与えるべきでしょう。
   (略)


池上さんの指摘はいつも具体的です。
修正案も明示します。
記者もデスクも傾聴すべき意見です。


   また、実際にどのような「あおり運転」があったか図解しています。
   これを見れば、被告がいかに執拗(しつよう)に
   被害者の車を妨害したかがわかります。


   この点では、図解が全くない毎日や、
   簡単な図解しか掲載しなかった読売よりは
   わかりやすいものになっていますが、
   (引用者注:朝日の記事を指している)
   意外にも(?!)日経新聞の図解は朝日より詳しく、
   わかりやすいのです。



文章だけでは理解しづらい現場の状態が
図解を工夫して掲載することで助けになります。
この点でも池上さんは比較した紙面の画像を載せて
読者に解説してくれます。


今年も一年、
池上さんの新聞の読み方には学ぶことが多かったです。
2019年も一読者として楽しみにしています。


池上彰の新聞勉強術 (文春文庫)

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