「紫陽花を観においでよ」とママ友の(鳥畑泉)

クリッピングから
讀賣新聞2022年8月15日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週好きな歌3首、抜き書きします。


  一年前のツイートに今いいねつき
  誰かの生とはつか交差す

        八王子市 土屋ひろ菜


    【評】自分でも忘れていたようなツイートに、
       誰かが今反応してくれた。
       確かだけれど淡いネットならではの独特のつながりを、
       情感たっぷりにとらえた下の句がいい。


はつか【僅か】(形動ナリ)
視覚や聴覚に感じられる程度がごく少ないさま。わずか。ほのか。
「初雁の僅かに聞きし言づても雲路に絶えて侘ぶるころかな
新古今和歌集恋五」(大辞林


  「紫陽花を観においでよ」とママ友の
  四十年のつかず離れず

             船橋市 鳥畑泉


  虹色が四色という隣国の
  兵士の瞳に降り続く雨

        松本市 鈴木真理


    【評】国によって、虹の色の数え方は異なる。
       虹が違えば、雨も違って見えるのだろうか。
       文化や慣習の違いに思いを馳(は)せつつ、
       どこか兵士の希望を願う気分が伝わってくる。