水切りのように転職くりかえし(月館桜夜子)

クリッピングから
讀賣新聞2021年6月15日朝刊
読売歌壇(俵万智選)


今週も好きな歌3首、抜き書きします。


  水切りのように転職くりかえし
  私は遠くへ行けるだろうか

      東大和市 月館桜夜子


     【評】いきなりは遠くへ行けない。
        けれど途中でしくじったら、
        そのまま底のほうへ沈んでしまう。
        転職に賭ける気持ちと不安、
        その未来の不確かさが「水切り」の比喩で、
        鮮やかに表現された。


  <だるまさんがころんだ>のごと色づいて
  初夏へと距離を縮めゆく枇杷

          平塚市 小林真希子


     【評】じっと見ると止まっているが、少しずつ近づいてくる。
        色の変化を、遊びと重ね合わせ、
        しかも初夏への距離としたところが巧(うま)い。
   

  設問の四角の中の「ほにゃらら」を
  硬い言葉で埋めてもいいか?

          東京都 玉井洋介


     【評】もちろん、いいのだけれど、
        いかにも柔らかい語感の「ほにゃらら」に、
        気勢をそがれる感じが面白い。


【評】を読んでいると、
作品を前にして、作者と万智先生が対話を始めたかのようです。
なぜ先生がこの3首を選んだのか、
自分なりに考えています。
(下線部クリックで同じ作者の別の歌が読めます)


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