白神山地の湧き水と『1Q84』の森

このところ日本酒に少々ハマっている。
近所にN屋という志の高い酒屋があり、
どんな有名な酒も定価売り。
酒を投機の対象にする可能性があるとしてネット販売せず、
すべて店頭での対面販売。



したがって、プレミアム価格(つまり、定価に値段を上乗せする)を
よしとせず、そうした銘柄はいっさい店に置かない。
それでいい、と一酒呑みは静かに同意する。
蔵元と客を結ぶことを最上の悦びとする酒屋、居酒屋こそ
長くひいきにすべき店だと僕は堅く信じているのだ。




にごり酒「ど」で有名な秋田・白瀑(しらたき)醸造
酒をN屋に卸していることをホームページで知り、
探しに出かけた。
「白瀑」「山本」(蔵元の山本さんが陣頭指揮で創り出した銘柄)、
「ど Summer」(昨年醸造した分が幸運にも残っていた)を買ってくる。
寡黙な店主に訊くと、「白瀑はうまい酒ですね」とポツリ答える。
期待できそうだ。



ママチャリを走らせ、駅前のスーパーS屋で材料を仕入れる。
「トマトとモッツァレラの塩昆布和え」は
東高円寺「天★てんせい)」のご主人に教わった一品。



「よくぞ、塩昆布を使うことを思いついたね」と僕。
「要は塩分をどこから取るかってことなんですよ。
それより、最後に太白ごま油で味をまとめるのがコツ」とご主人。
なるほど、クリエーティブ。しかも、シンプル。


さっそくレシピを盗ませてもらったが、
想像以上にうまくいった!
チーズを使ったメニューが日本酒に合うことにはホント、驚く。
これが、酒とつまみのマリアージュと言うものか。




自らときおり週末に開く酒場を "Tora's Bar"と戯れに呼ぶ。
新橋の伝説のバー "Tony's Bar" には永遠に及ばないが、
トラになるほど飲みすぎる心配もない。


さて、この週末は、T書房で発売日に入手した
村上春樹1Q84 BOOK 3』(おそらく完結篇)を読む。
白神山地の湧き水で作った3種の酒を交互にチビリチビリやりながら
自家製つまみを味わい、600ページの物語を読み進む。
Tora's Barで漂いながら、更に深く、森の奥へ。
なんたる至福。