『グーグル秘録 完全なる破壊』(2010)


ケン・オーレッタ『グーグル秘録 完全なる破壊』
(土方奈美訳/文藝春秋; 2010)を読む。
ラリー・ペイジ、サーゲイ・ブリン、エリック・シュミット
3トップをはじめとするグーグラー(グーグル社員の愛称)に
150回のインタビューを重ね、4年かけて本書を執筆した。


グーグル秘録

グーグル秘録


1998年、著者はマイクロソフトビル・ゲイツに質問する。
 「最も恐れている挑戦者は?」
ゲイツの答えは、
 「怖いのは、どこかのガレージで、
  まったく新しい何かを生み出している連中だ」
この年、まさに、
ペイジ、ブリンの出身である
スタンフォード大学に近いメンロパーク市内で
グーグルが誕生していた。ゲイツの予感は当たった。


                 (本書p.49より引用)



以来12年、グーグルは他のどの企業もなし得なかった領域への
挑戦、成功を続けている。
著作権問題、中国政府とのあつれき、
アップルなどこれまで良好だった企業との競合など、
その成功に比例して難問も生まれている。



これからのメディア、イノベーション、広告などを考察するとき
当分グーグルから目は離せない。
本書は取材の量、グーグルを誉めそやすのでも
けなすのでもない距離感など、
ノンフィクションとして読み応えがある。
著者は雑誌「ニューヨーカー」記者。
メディアの世界に造詣が深い。


原題 "Googled—The End of the World as We Know It" の方が
内容を的確に表現していると思うが、
"Googled" を置き換える日本語は見つからなかったのだろう。



それにしても、世界が "Googled"されたいま、
グーグルの社是、"Don't Be Evil (邪悪になるな)"は
僕たちにも重くのしかかる。
歴史を振り返るとき、
組織や国家の善悪の判断は、あてにはならないからだ。