神保町シアターで神保町を舞台にした映画、
『森崎書店の日々』を観る。
千代田区主催・第三回ちよだ文学大賞を受賞した
矢木沢里志の同名小説が原作である。
映画初主演・菊池亜希子を
ベテラン俳優陣、内藤剛史、きたろう、岩松了らが支える。
脚本・監督は日向朝子。
- 作者: 八木沢里志
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/09/07
- メディア: 文庫
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(以下一部ネタバレ含む)
事件らしい事件は起こらない物語である。
一番の山場は主人公・貴子を捨てた男の元へ
森崎書店店主の叔父サトルが貴子と乗り込み男に謝罪を迫る場面だ。
しかし、修羅場になっておかしくない場面でも
貴子は自分の気持ちをようやく男に伝えるにとどまり、
観客のカタルシスは充分とは言えない。
この小品の最大の見どころは、
身近なはずの神保町の町並みやそこに暮らす人々の生活の描写の
映像としての味わい深さであると僕は思う。
見慣れた町が物語の効果によって増幅され、
より魅力的に見えるのは映画の魔法である。
劇場を出て、
以前目星をつけておいた食堂兼居酒屋で夕食にする。
現実の暮らしと虚構の暮らしが
同じ神保町を舞台にして交錯する感覚が僕には面白い。
こうした映画に区が協力することで
地域活性につなげるのは価値ある試みであると思う。
神保町シアターで11月19日(金)まで公開中。
(文中敬称略)