アートと暮らす人、『ハーブ&ドロシー』


渋谷のシアター・イメージ・フォーラムで
『ハーブ&ドロシー』(2008)を観る。
佐々木芽生が監督・プロデューサーを務めたドキュメンタリー映画
さとおな氏が自身のブログ「さなメモ」
繰り返し褒めるので気になっていた。



ニューヨークに生まれ育った夫婦が
つましい公務員生活をまっとうしながら
アートのコレクター・キュレイターとして生きてゆく。
現代アートの作り手たちと豊かな交流を続けながら
生涯をかけて収集した5,000点余りの作品を
すべてニューヨーク市の美術館に寄贈する。



  (ハーブとドロシーを描いたWill Barnet、1977年の作品。
   パンフレットより引用)


こんな生き方があるのかと清々しい驚きを感じた。
自分の好きな作品を発見し、身銭を切って購入し、
ともに暮らした後にそのすべてを自分の所属する社会に還元する。
かと言ってハーブとドロシー夫妻はストイックな聖人君子ではなく、
日々の暮らしを楽しみ、他人に指図されることを嫌い、
自分たちの好みを押しつけることもしない市井の人である。
その姿をフィルムに定着した佐々木チームの仕事が素晴らしい。



劇場を出ると、佐々木監督らしき女性を見かけたので
サインをお願いし、一言二言言葉を交わした。
監督はこの上映のためにニューヨークから帰国していると聞いた。
肩ひじはらぬ、粋な人たちに元気をもらう夜になった。
渋谷駅から徒歩8分、イメージ・フォーラムで公開中。



(文中敬称略)