岩明 均『ヒストリエ』(2003-)


午前中の時間をやりくりして
メディア芸術祭入賞作品展3回目。
主だった作品はだいたい目を通したが、
長編アニメーションは3階講堂で決まった時間に上映、
アート部門大賞はミッドタウン別会場に展示されている。
僕の限られた持ち時間ではすべてを回ることは不可能だ。



マンガ部門大賞、岩明均ヒストリエ』がどうにも気になったので
マンガ閲覧コーナーに行く。
ここにはソファがあって
入賞作品を本、携帯、パソコンで読むことができる。


ヒストリエ』の舞台は紀元前、古代オリエント
主人公エウメネスは養父を殺され、
自分がスキタイ族出身で
ギリシャ人によって奴隷の身分に落とされたことを突然告げられる。
壮大なスケール、ていねいな作画、予測しきれない展開。
一巻だけと思って読み始めたら夢中になってしまった。



今年のマンガ部門で、ぶっちぎりで大賞を取った作品であり、
物語はまだ序章である。
6巻のうち4巻ほど読んだところで時間切れになってしまった。
続きはどこかのマンガ喫茶で読むとしよう。
(置いてあるかな?)


Wikipediaによれば岩明は寡作の人。
ヒストリエ』も7年かけてようやく6巻まで出版。
膨大な取材と作画にかける時間を考えれば、
寡作であるのも、ときに休載になるのも道理だ。



こうした作品が生まれ大賞を取るなら、
日本のマンガ文化はまだまだ発展の余地があるとも思うが、
マンガにせよ、アニメーションにせよ、
ここで賞を取る作品はほんの上積みの部分に過ぎない。
それぞれの現場では現実的制約、低予算など
困難な制作環境があるのは想像に難くない。
だからこそこうしたフェスティバルを応援し、
自分もその渦の中に身を投じてみたいと思うのだ。
創造性に限界はない。



これもいいフェスティバルだなぁと感心したのが、
TOHOシネマズで実施している「第二回 午前十時の映画祭」
名作100タイトルを毎朝午前10時から
大人1,000円、学生500円で観せる企画だ。
家でDVDで映画を観るのは確かに便利だが、
暗闇の中、他人と一緒に大スクリーンで観る映画の醍醐味は捨てがたい。
この企画も目のつけどころがよい。


wikipedia:岩明均


(文中敬称略)