日本人の「天国」はどこにある


もしかしたら日本人が思い描く「天国」は
キリスト教徒やイスラム教徒の心にある天国とは
まったく景色が違うのではないかと旅のさなかに考えた。






桜が散りかけ、菜の花が咲き、川がとうとうと流れ、
掛け流し温泉の湯量はたっぷりしている。
近くにはカタクリの花が群生する場所があり、
近隣の村人たちが世話をする。
陽の高いうちにコップ酒を傾けはじめると、
店の親父がつまみに自家製わさび葉しょうゆ漬け、こごみやノビルの小皿、
さらにはコシアブラなど4種の山菜天ぷらを出してくれる。




10連休後半、福島・奥会津の宮下温泉にやってきた。
こんな「天国」なら僕たち日本人にもずいぶん親しみやすく、
過ごしやすいと思えるのだ。





往路は上越新幹線で東京から浦佐まで。
浦佐上越線に乗り換え、小出。
小出から只見線に乗り換えて、会津宮下で下車。
乗り換え時間も入れて東京から5時間ほどでやってくる。
帰路は只見線で反対方向に会津宮下から終点の会津若松まで。
磐越西線に乗り換え、郡山。
郡山から東北新幹線で東京に帰る。
全部で5時間半ほどかかる。



連休直前から急に宿の予約が入り始め、
昨日までは大忙しだったと若女将。
自粛疲れの影響か、旅に出る人が増えている。
僕たちが宿泊したこの日は二組だけでガランとしていた。
只見線の写真を撮る人、沿線の川で釣りをする人。
この地をおのれの「天国」に見立て愛する人は多いのだ。