猫の一生も楽じゃない


同居人からメールが入り、
ハエタロウの具合がよくないと言う。
同居人は普段からおよそムダな言動がない人なので
彼女が「具合がよくない」と書いてきたなら
本当に「具合がよくない」のだ。



そうなると僕は残業もせず寄り道もしない。
家にまっすぐ帰り、かかりつけのO先生の診療予約を取り、
自転車の後ろにハエタロウを入れたカゴを載せて連れていく。
様子を話すと先生は抗生物質、消炎剤、ビタミンB群、
栄養剤、長期消炎剤の入った注射を二本、
ハエタロウの背中とお尻に打つ。



ハエタロウは歯肉炎の持病があり、
野良猫のままだったらエサが食べられなくなり間違いなく死ぬ。
我が家に居候を始めてからはそうした体調の変化が分かるので
家族の務めとしてO先生の元に連れていく。
炎症がおさまればまた普通にご飯が食べられるようになるが、
残念ながら完治する病ではない。
人間だって楽なことばかりではないが、
猫がそれなりに幸福な一生を過ごすのも並大抵のことでないと知る。