池井戸潤『空飛ぶタイヤ』(2006/2009文庫版)


本好き・読書好きならとっくにご存知だろうが、
「ブクログ」というコミュニティサイトがある。
僕もずいぶん前に偶然発見し以来愛用している。
自分の買った本を並べておけるバーチャル本棚が
なかなか素晴らしいのだ。



ブクログ」のランキング、レビューは
本を選ぶときにもときどき参考にしている。
僕自身もこれまでデジタルノートに書いてきた書評94冊分を
自分の「ブクログ」ページに転載している。


下町ロケット

下町ロケット


あるとき殿堂入りランキング1位に
池井戸潤下町ロケット』があった。
僕は作者も作品も知らなかったが興味を惹かれてレビューを読むと、
この日の朝、この作品で直木賞受賞が決まった。
既に作者・作品のファンである読者が
いくつもレビューを書いていて僕は知ったのだ。
Amazonを検索すると既に品切れ。
さすが直木賞を受賞すると本の売れ行きに直結する。
二週間ほどで届くので注文しておいた。


空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)


成田空港の書店をふと覗くと
同じ作者の代表作『空飛ぶタイヤ』(上・下)が運良く棚に残っている。
Amazonでは『下町ロケット』と同じく品切れだった。
旅の友に迷わず買った。
これがべらぼうにおもしろい。
こんなワクワクする小説を読むのはいつ以来か。


まじめに小規模の運送屋を経営していた主人公が
社員の起こした事故で人を死なせることになり地獄を見る。
ところが、それは整備不良でなく
大手ホープ自動車製トラックの構造的欠陥だった。
主人公は大企業に立ち向かうが、その壁はひどく堅固だ……


空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)


文章、構成、人物描写。
どれをとっても一流である。
職人の父に育てられ大学教育まで受けさせてもらった僕は、
どうしたって弱い立場の主人公に肩入れしたくなる。
大企業が時として見せる不条理に負けないでほしい……
ジンときて涙が何度もにじみかけた。
悪役の親玉を演ずるホープ自動車狩野常務の描写がいかにも憎々しげで、
それが物語に奥行きを与えた。
またひとり、今後の活躍が楽しみな作家ができた。


(文中敬称略)